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料理とも戯れる [本]

村上龍さんの1996年の作品。作家となって成功している主人公が、突然中学の頃の同級生アオキミチコから電話をもらう。彼女は初恋の相手。次に長崎に来る時に会えないかと言う。その誘いに乗り、ハウステンボスのレストラン「エリタージュ」で食事を共にする。そしてフルコースのディナーを食べながら、23年のギャップを徐々に埋めるように会話が進む…というお話。


はじめての夜 二度目の夜 最後の夜 (集英社文庫)

はじめての夜 二度目の夜 最後の夜 (集英社文庫)

  • 作者: 村上 龍
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2000/01
  • メディア: 文庫



各章のタイトルが料理名になっていて、その簡単なレシピも載せられている。例えばこんな感じ

Melon au jambon de Bayonne
バイヨンヌ産ハムとメロンの黒ゴショウ風味

メロンのフルーティな香りと生ハムのスモークされた薫りが混ざり合い、
そのハーモニーを味わう一品。
さらに、黒ゴショウのすりつぶしたものを加えることで、
一味ちがった風味が引き出される


それらの料理が二人の会話に花を添えるのかと思いきや、それぞれの個性が強く逆に、会話に割り込み、会話をリセットする。でもそれは決して邪魔立てしているわけではなく、むしろ一緒の非日常を味わい、感じることで、二人の一体感を高める事に寄与している。

会話の表現で面白いなと思ったのは、主人公であるヤザキの言葉が「」で囲われないこと。最初の方は少し例外があるのだが、途中から全然囲われなくなる。物語はヤザキの一人称で書かれているので、彼の言葉が、声に出してアオキミチコに話しかけているモノなのか、彼自信が心のなかで呟いているモノなのかが判りにくい。その後のアオキミチコの発言で間接的に確認できるのだが、一見判りにくい。一方でそうされることで自分側と相手側を明確に意識することが出来る。なかなかおもしろい。

もう一つの違いとして、彼女が長崎弁でフランクに話す一方で、ヤザキは標準語で通すことがある。途中、彼女の言葉に呼応するように長崎弁が出そうになってしまうが、無理やり標準語に戻す。一見、話が噛み合っていないように見えて、お互いにわかっている。自分も方言の残る地方の出身なのでこの感じは良く分かる。

そして、題名の通り、一度だけでなく、二度目と三度目がある。同じくフルコースなディナーだけど、レストランを出てから帰るまでの時間の過ごし方がそれぞれ違う。かつて、意識しながらも互いの気持ちを確認することなく一緒の時間を過ごした二人が、20年以上の時を越えて再会するとどうなるのか。抑え気味の描写が逆にリアリティを与えていると思う。
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