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池袋西口公園の原点(1) [本]

久しぶりのブログアップデート。最初ログイン出来ずに困った :-) 最終が2012年だったからほぼ3年ぶりということになるのか。

再開一つ目は本のレビュー。題材は池袋ウエストゲートパークシリーズで有名な石田衣良さんの短編集。


てのひらの迷路 (講談社文庫)

てのひらの迷路 (講談社文庫)

  • 作者: 石田 衣良
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/12/14
  • メディア: 文庫



短めの感想はBookmeterに書いている。そしてそこでも触れたが、この短篇集は各エピソード前に著者自身の「まえがき」がある。自分はあとがきとかを最初に読んだりしない方なので、ネタバレのアプローチに少し抵抗があったが、合わせて読んでみるとなかなかおもしろい。

そして、「著者がエピソード毎に前書きなら、感想もエピソード毎に書いてみようか」ということで、書いてみた。感想というよりも読み終わった後に感じたことを書き綴っただけなので内容から大きく外れているのもあるけど、あしからず。

そして一部ネタバレしてます。




ナンバーズ

私小説という分野はSFやフィクションの世界に比べて簡単だろうと思っていた頃があった。実際にしかも自分に起きたことをひたすら文書にしていく。まぁ、ある意味、日記の延長のようなものだと。それに比べたらSFなんかは想像力と創造力をフルに働かせて作らなければならず、何倍も大変だろうなと。

この作品はそういった考えを払拭してくれる。

物語は、ランダムで一見何の意味もないように見える数字の羅列から始まる。それは入院患者の年齢で、中に倒れた母が含まれている。回復の見込みは無いと言われながら、病院の廊下に詰める父とぼく。

実際にあった話をベースにしている。その頃は作家でもなんでもなかった著者は冒頭の数字を見て、これを小説にしようと考えたと言う。その時の気持ちや思いを真空バックして、作家になってからそれを取り出して文書にした、そんな作品。

旅する本

読む本全てが自分で納得できるわけでは無い。本を手にしてその世界に没頭しながら、ここは賛同できる、ここはどうかな、とか考える。

そんな中で、「これはもしかしてボクのために書かれた本じゃ無いだろうか」と思える本に出逢えるかもしれない、そんな妄想に囚われるのは著者だけではないはず。

それを少しファンタジーな感じでまとめた作品。中にも題材として出てくるけど、絵本の元ネタにもなるかも。

完璧な砂時計

時間を流れを正確に把握したい、というのは誰もが憧れる能力だと思う。絶対音感は小さい頃に訓練すれば身につく(逆にある年齢を過ぎるとどんなに努力してもダメ)と聞くが、時間はどうなんだろう。

この物語では、そんな「絶対時間感」を持つ女性が出てくる。そして実際にその能力を見せつけ、主人公を驚かせる。

さらにその能力を身につける過程で知り得た「時間」の真の姿。それによって彼女は確信を持って自分の行動を決めることができる。

時間が細かい粒子に分解されその中に、現在・過去・未来が全て入っている。一つの細胞に含まれるDNAの中に体を形作る全ての種類の細胞の設計図が入っているように。

あと、この能力は伊坂幸太郎さんの「陽気なギャング」シリーズに出てくる雪子さんを思い出す。そして、やはりこの能力を持つのは落ち着いた感じの女性だよね、と妙に納得。

無職の空

本人自ら、私小説と紹介している一編。実際に著者が会社を辞めた時の話を元に書いているとのこと。

最近ではIT系のエンジニアが「退職しました」というタイトルでその経緯と今後についてブログを書くことが多いが、その走り?とも言えるかも。

まぁ、退職エントリの場合は離職する職場に対して感謝と離れることに対する複雑な思いを述べるのが普通だが、この作品ではそんなものは一切ない。上司の態度に納得が行かず、その場で退職を決める。そして自由を満喫する。

著者自身、後から読んでどういう感想を持つのか聞いてみたいが、間違いなくそこで起きたことを、思いや感情も含めてそのまま記録している、そんな作品。

銀紙の星

ある若者が、どのように引きこもりを始め、どのように嵌って行き、どのように戻って来たかを描いた作品。

引きこもりは自己防衛の為の一手段だが一方で周りの人たち、特に家族を酷く疲弊させる。通常はこの状態になる前に周りがついていけなくなる。ぶち切れてドアを壊し引きづり出したり、下手をすると暴力沙汰になる。

つまり引きこもりを継続するには周りの理解とサポートが必要だ。「引きこもらせ力」とでも言うべきか。

この作品は引きこもる人の視点で書かれていて、時間をかけ自ら外に出る努力をするようになった。そのウラには、引きこもりを続けさせる、周りの努力も同じようにあったはず。

機会があれば著者にはその視点での作品も書いて欲しいな。

ひとりぼっちの世界

これも実話をベースにしたお話。そして小説家になる前だったのに「いつかこれを題材に書こう」と思っていたとのこと。自分にはそんな才能はないけれど、そんな気分になるのはよくわかる。

舞台は横浜。石川町から十数分の丘の上が2人の住処という設定だが、実際にそこに住んでいたらしい。自分も桜木町から徒歩15分の同じようなところに住んでたことがあるので、なんとなく臨場感がある。

そして、この話はこの短編集の中で個人的に一番好きかも知れない。

ひとりでいる時間が必要な彼と、それに耐えられなくて別れを切り出す彼女。もう少し歳を重ねるとそれでも大丈夫だったり、子供ができるとベッタリよりもむしろそんな旦那の方が良いと思うかも知れないな。

でも気がついてしまったので仕方ない。男の人は一緒にいる理由が一つでもあれば一緒にいられる。女の人は別れる理由が一つでもあれば別れを切り出す。そんなとこかな。

ウエイトレスの天才

お客さんのオーダーを何年経っても覚えているという才能を持ったウエイトレスの話。

最初、サヴァン症候群的なお話かと思ったが、ここでは極普通の女性が才能の持ち主として描かれている。

では何が彼女にその才能を与えているかというと、食に対する飽くなき興味、というか、食べることに対する果てしない欲。三度の飯より食べる事が好き、って変な言い方だが、それくらい食欲が強い。

それは自ら食べることにとどまらず、他の人が食べることに対しても「自然と」気が行ってしまい、結果的にどの料理をどのように食べていたかを覚えてしまう。

無意識のうちにそうせざるを得ない、他の人がなぜそうしないのかがわからない、というところに才能というものは根ざしているのだと思う。

0.03mm

コンビニで働く学生と近所の主婦の不倫の話。0.03はコンドームの薄さのこと。確かにこういうネーミングのがコンビニで売っている。ま、最近の最薄は、0.02だけどね。

ストーリー自身も面白いが、やはり場面場面の描写がスゴイなと思う。例えば、女から部屋番号を渡されて「起きてるから」と言われた時の男の反応。

良之の身体のなかで、波がうねった。腹のしたから起きたうねりは、内臓のひとつひとつを揺さぶって、胸に達する。心臓が一拍ずつではなく、二度ずつ鼓動を刻むようだ。


んー、こんなの書けないよー。

そして最後の切迫した場面で、「どうせ、ばれるなら…」と言われて、あり得ないと思いつつ、きっと自分も言われた通りにしちゃうだろうな。なんだろ、これ。

書棚と旅する男

「自分だけに向けて書かれた本」というモチーフは「旅する本」と同じ。ただしこちらは本が歩みよってくれるのではなく、自ら探しに行く。

老人は長い旅の末にそれを見つけ、目的を達成後に自ら人生を終えてしまう。一方で主人公は「本は一冊では用をなさない、いい本は互いに支え合う」という。

自分もどちらかというと後者な考え方だが、別の作品でその辺りもう少し掘り下げて書いて欲しいな。

タクシー

タクシーの運転手さんとの会話を書き留めた、そんな一節。全体を通すストーリーは無く、オムニバス的に幾つかの会話がまとめられている。

とは言え、テーマがないわけじゃない。ここでは運転手さんが、「自分とタクシーという職業を語る」。まぁひねりのないベタなテーマだが(笑)、なかなか面白い。

これを小説と呼べるかどうかは疑問の残るところだがww

終わりのない散歩

道で出会ったおばあさんのことを書いた一節。毎日ウォーキングしてるという。確かに元気に大股でドンドン歩いて行く。

ある日、いつもと違う場所で彼女を見かける。向こうも気が付き一緒に帰って来たけど、どうやら道に迷っていたらしい。

気丈に振る舞いながらも、人知れない恐怖が彼女を襲っていたに違いない。それは、単純に「家に帰れない」ということだけじゃない。

歳はとってもまだまだ体力では若い人に負けない、そう思っていた自信がガラガラと崩れる。いくら身体が丈夫でも道に迷うようでは出かけられなくなる。そしてそれはきっと悪化していく一方だし、いずれ自分自身すらわからなくなる。

そこまで考えたかはわからないが、そういう不安がジワジワと来るだろう。髪が白くなるまで元気で生き続けるのは素敵なことだけど、それに寄り添うかなしさを垣間見たかな。

片脚

この短編集を手に取ってたまたま開いたページにあったのがこれ。これを読んで、この本を買おうと決めた。

他のは実話ベースなモノが多いが、これは明らかに作り話。なんたって、女性が脚を切り取って彼氏のところに宅急便で送るんだから。

設定として面白いのは、その脚が生きているだけじゃなく、離れたところにいる本体と感覚が繋がっていること。

そして男女なので自然とコトが始まるのだが、当然制約がある。あるにはあるが、実は触感だけでなく、声もお互いに聞こえるし、匂いもわかる。

つまり普通じゃないのは女性が手を出せないのと目が見えないこと。これってつまりは目隠しして身体を縛られてるのと同じ。

で、結局そういうプレイになるわけだが、変な官能小説みたいな設定じゃなくこういうのをサラリと書けるのはいいなと思った。

著者は脚フェチな男性をターゲットに書いたかも知れないけど、きっとMな女性にグッと響いているはず。なんてね。

と、ここまでで半分の12話。長くなったので続きはまた次回としよう。
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