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檻に閉じこめられないモノ [本]

デニス・リーマンの1987年の作品。原題は "The Getbacks of Mother Superior"で「女子修道院長の復讐」ということか。

囚人同盟 (光文社文庫)

囚人同盟 (光文社文庫)

  • 作者: デニス リーマン
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 1998/02
  • メディア: 文庫



Amazon.co.jpには新品の在庫はなく、全て中古(古本)のみ。きっともう増刷しないんだろうな。お手ごろ価格なので、読みたい人は無くなる前に買っておいた方が吉。

この作品は刑務所を舞台にしたフィクションの小説なのだが、著者はなんと刑期53年の現役の服役囚。つまり、牢屋の中でこれを書いている。それが否応無しに臨場感を高める。

物語は服役囚の一人、フラット・ストーンことハンバート・ジェイムズ・バーカー。出られる見込みもなく、3J5房という雑居房で他の7人の受刑者と供に毎日を過ごす。代わり映えのしない毎日。

そこに新たな囚人が加わる。ドナルド・コンロイ。銀行強盗の罪を問われて服役中。別名マザー。修道院院長(Mother Superior)に扮装して銀行を襲った犯人とされ、Motherと呼ばれている。

マザーは初めは孤立していたのが、色々な事件を通じて、一人、二人と彼を信頼し始める。そしてある目的の為に皆で一致団結し、それぞれ自らを変え始める... というストーリー。

展開は奇をてらった事もなくとてもシンプル。それでいて、飽きさせずに最後まで一気に読ませる。そしてとてもビジュアル。日本語訳で600ページの長編だが、枝葉を落として象徴的なエピソードをピックアップするだけで、映画のシナリオを作れそうな感じ。

檻の中の描写はとてもリアル。特に、囚人同士、囚人と看守のやり取り。どこまで誇張しているのかわからないが、多かれ少なかれこういう事はあるんだろう。そして、冒頭の臭いの表現。さらに作品中でアクセントとして何度か使われている、靴下の不出来具合の表現。これらは中にいないとなかなか判らないよなと思う。

例によってにおいで目が覚める。いろんなものがごったまぜになった激臭といった方が真実に近い。タコマ製紙会社から流れてくる鼻をつく煤煙。第三・四舎に収容されている千一人の男たちの種々雑多な悪臭。 ... これに製紙工場と二千本の汗臭い足の組み合わせとなると、その結果たるや、ワード・ドッグの言う所の「樽詰め初期のヴィンテージ・ワイン特有の芳醇かつ馥郁たる香り」となる。なんだかよくわからないが、要するにこの刑務所はキング・コングのわきの下みたいに臭いのだ。...

今朝のソックスはグリーズィ・ダニーの片棒をかついで靴下の押し売りをやっている能なしのイタ公どもから買ったもので、これがまた子猫の死骸をそのまま商品にしたのかと思うようなひどい代物だった。どうやら猫舎の隅の糸くずを拾い集めて織ったらしく、四十色におよぶさまざまな糸が混じっているうえに、時計のぜんまいそっくりの縮れた黒い繊維がそこらじゅうに散っていて、ひょっとしたら...

グリーズィ・ダニーのやつは、... 1ヶ月のあいだは3J5房にまともな靴下を支給してやれと、衣服室にいる手下のトロッグにきっちり言い渡してあったにちがいない。というのも、あれからちょうど31日目の今日、おれの靴下は上にも下にも口ゴムが付いた筒状の代物だった。ふくらはぎに汗止めのスウェット・バンドを巻こうというならこれでけっこうだが、終生の友に対してはあまりにも無礼千万と言うべきだ。...


しかし、服役しながらこの物語を書くというのはどうなんだろう。思いつくまでは良い。服役囚の妄想としては悪くない。が、実際にペンを取り、頭の中のストーリーを文字にし、文章にしていく。これは辛くないのか。出られる見込みのない立場にありながらこれを書けるのか?

いや、中にいるからこそ書けるのかもしれない。書く事によって彼の心は牢から離れられるし、それは誰にも止められない。当然、罪は罪として償わなければならない。その為に社会から切り離される。が、長期に拘留されると壊れてしまう。書く事でそれを防げるのであればそれもありかも知れない。

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